【東京都】生活保護受給者(単身)お部屋探しに必要な条件【10選】

この記事は2023年7月に更新しています

生活保護受給者は、自立の為に、役所からアパート契約に必要な初期費用を出してもらう事が可能です。

しかし、初期費用を出して頂くには役所から出される条件を全てクリアしなければなりません。

条件を満たしていないと、せっかく審査に通った物件でも「お金を用意する事が出来ず」
最終的に契約が出来ないといった状況になってしまいます。

申込をすると、物件を止める(他の人に物件を取られない状況にする)事にもなるので、契約がキャンセルになった場合、違約金を請求される事もあります。

最悪なケースを避ける為にも、ご自身だけで判断せず、ケースワーカーさんとも情報を共有しながらお部屋探しを進めていきましょう。

目次

条件①【金額】賃料53,700円以内であること(特別基準を除く)

東京都で決められている生活保護受給者(単身)の一般的な住宅扶助費上限は53,700円になります。

千代田区、港区、中央区のような物価が高いエリア(特別基準地)では単身でも特別基準69,800円が認められますが、それ以外のエリア(1級地)では、この賃料53,700円というのが第一の条件となっています。

例えば「賃料55,000円、管理費0円」の物件があった場合、そのままの条件では役所の許可が得られません。

賃料53,800円100円でもオーバーしてしまっただけでも同様です。

賃料は53,700円である事が絶対になります

しかし、東京都で「賃料53,700円以内」で探すとなると、お風呂が付いていない。という物件も多く存在しています。

53,700円より高いお部屋を探してはいけないという事ですか?

…いえ、そういう訳ではありません!

55,000円で募集している物件でも、管理会社さんが賃貸条件を変更してくれれば契約する事が可能です!

オーバーしてしまった金額を管理費という名目で計上する。という方法を適用します。

(例)賃料55,000円の物件の場合

賃料53,700円 管理費1,300円
※管理費は役所からお金が出ない為、この場合1,300円が自己負担となります。

上記のように賃貸条件を変更する必要があります

しかし、この賃貸条件変更に関しては、全ての管理会社さんが承諾して下さるとは限りません。 

生活保護受給者が相談可能な物件でも「55,000円の賃貸条件を変える事が出来ない」と言った場合には、必然的にその物件を諦めなければならない。といった事態になってしまいます。

役所から出される金額の条件に関しては、ある意味「絶対」なので、まずは賃料の金額に注意しましょう。

条件②【金額】管理費負担が5,300円(原則)以内である事

賃料を53,700円に合わせればいいのは分かりました!

自分はあまりお金を使うことも無いので

10,000円ぐらい自己負担する事が可能です

実は、この自己負担金額も注意が必要になるんです

負担する金額が高ければ高い程理想のお部屋に近づける可能性が高くなります

物件の選択肢を増やす事にも繋がるので、金銭管理が得意な方ほど自己負担金額を増やして物件を探してしまいがちです。

しかし、この管理費負担も役所が許可出来る限界があるようです

①過去の管理費 最高金額

賃料:53,700円 管理費6,300円

②最近の管理費 最高金額

賃料:53700円 管理費5,300

以前は、賃料53,700円 管理費6,300円 = 60,000円が役所で許可してもらえるギリギリの金額でした。
※特別基準区などの例外を除く

しかし、最近では賃料の10%程度までの負担(つまり5,300円)までに抑える必要があるそうで、”場所にもよりますが”総賃料59,000円までの物件を探して欲しい。という、ケースワーカーさんからのご助言をよく耳にします。

どうしても希望の物件が見つからず「これだけの自己負担が可能だ!」と思って探していたとしても、役所から許可されないと契約をする事が出来ませんので、いくらまでの自己負担金額が可能かを事前にケースワーカーさんに確認するようにしましょう。

条件③【金額】初期費用の金額が279,200円以内である事

初期費用の金額に関しては、とてもやこしいです

請求書を例に見ていきましょう

この場合、合計金額が334,170円になっています。

一見、279,200円を超えてしまっているのでは?と思ってしまいますが、役所から支給される金額279,200円には前家賃・管理費・鍵交換代を含みません

青いマークの欄を合計金額から差し引いてみましょう

334,170円-賃料53,700円-管理費1,300円-鍵交換代15,000円-消費税1,500円=262,670円

となりますので、役所から支給される金額に収まります。

今回は最低限の項目のみ記載しましたが
最近の物件では24時間サポートが必須のところも多いです。


役所ではこういった付帯サービス(24時間サポート、消毒・抗菌代等)の費用を負担して貰う事が出来ませんので、その場合には管理会社さんと、色々と交渉する必要が出てきてしまいます。

他にも区によっては鍵交換代が支給されない所もあったりと、色々と気を付ける点が多いです。

・初期費用金額は279,200円までに収める必要がある
  ※前家賃・管理費・鍵交換代は除く

・鍵交換代が支給されないエリアもある

・24時間サポートなど、名目によっては支給されない金額も多数ある

条件④【許可】引っ越しの許可を得ている事

生活保護が決定して間もない住所が無い方など、すぐにアパートへの引っ越しが認められるケースは稀です
(住所が無い方には、簡易宿泊施設などを紹介させられる事が多いそうです)

開業当初、ケースワーカーさんの転宅許可をそこまで気にせず、お客様へ物件をご紹介していたのですが、契約直前になって、転宅許可が下りず、契約金を支払えないという事を過去に何度も経験してしまいました。

お客様が気に入った物件は流れ、管理会社と大家さんは激怒し、請求された違約金を立替えるという。

誰もが不幸になってしまう事へ繋がっています。

契約金が用意できるか曖昧な状況でお部屋を探してはいけない

今では心を鬼にして、上記に注意してもらっています

条件⑤【許可】生活保護を受けている管轄内である事

本来であれば、生活保護を受けている方でも、自分の好きなところにお引っ越しが出来る権利があります。

しかし、現在生活保護を受けている場所とは違うエリアでのお引越しには「移管」というややこしい手続きが発生します。

この移管に関しては、今のケースワーカーさんが移転先のケースワーカーを説得するというやりとりが必要になってくる為、以下のような、移転先のケースワーカーを説得できる口実が必要になる事が多いです。

・親族など頼れる人(支援してくれる)が近くにいる所に引越す必要がある

・通っている病院の近くに引越す必要がある

十分な説得材料が無い場合、受入れ先から「移管拒否」という返答になる事も多く、その場合にはお部屋探しをイチからやり直す事になってしまいますので、この点も十分に注意が必要です。

こういった事を危惧してなのか、お引越しの許可が得られたとしても、基本的に生活保護を受けている管轄内でのお引越しをすすめられることが一般的となります。

※移管の場合、相手方(受入れ先のケースワーカー)の許可も必要な為
時間を要する上に、上手くいかないケースも多いです。
それでも、どうしても希望のエリアに引っ越したい方は、法律家などの支援してくれる方に依頼しましょう。

条件⑥【許可】物件の階数

高齢者や足が不自由な方など、「階段で2階以上の物件」を役所が許可してくれないケースも多くあります。

理由については、高齢の方の場合、今は良くても今後、階段の上り下りが大変になってきた場合、またお引越しを検討しなければならないからです。

基本的に、役所は一度転宅費用を出すと、2度目のお引越しをかたくなに認めてくれません
そのため、階段などの条件についてはとても厳しく追及されます。

※過去に、ロフト(室内に階段)が付いている物件でも役所から却下されてしまったことがあります。

足が不自由な方は「1階のお部屋であること」または「エレベーターが付いている物件であること」といった条件が追加される事に注意しましょう。

条件⑦【許可】お部屋が狭すぎない事

条件①で賃料が53,700円以内である事と記載しましたが
厳密にいうと、お部屋の広さによっても、賃料の上限が変わってきます。(平成27年7月1日から住宅扶助費の見直し

15㎡以上

賃料53,700円まで

10超~15㎡以下

賃料48,000円まで

6㎡超~10㎡以下

賃料43,000円まで

ケースワーカーさんによっては「15㎡以上の物件を探してください」と最初にアドバイスされる事があります。

必ずしも、15㎡以上じゃないといけない。という訳でもありませんが、賃料上限の金額がかなり変わってしまうという点と、10㎡以下のお部屋に限っては、狭すぎるという点で許可されない事もありますので、こちらも十分に注意が必要です。

条件⑧【許可】トラブルが多い物件ではない事

良い物件が見つかった。と思ったのも束の間「その物件は建物内でのトラブルが多いので許可できません」と役所から言われてしまう事もあります。

トラブルを未然に防ぐという意味合いがあるので、結果良い事なのかもしれませんが、そういったまさかの事態も発生してしまう事があります。

・入居者間でのトラブルが多い

・建物で過去に水漏れがあった

・その他、なんらかの事情でおすすめできない

条件⑨【許可】定期借家契約ではない事

区や担当ケースワーカーさん、個人の事情によって、ケースバイケースですが、定期借家契約はダメ。と言われてしまう事があります。

更新が出来る定期借家契約でも、借り手に不利な条件と捉えられてしまい、高齢者の方などは特に許可されないケースが多いです。

更新が出来ない定期借家契約の場合、もっと許可されない可能性が高くなります。

定期借家契約とは?
・期限があらかじめ決まっている契約(普通賃貸借契約と違い、期限が終了すると退去しなければならない)
 ※更新が出来るものもあるが、やっぱり更新出来ない。といったリスクが高くなる
・築年数が古い物件や、オーナーさんの意向で契約を解消しやすいようにしたい物件の場合に適用される事が多い。

条件⑩【許可】その他、役所の判断

役所では会議によって結論を出す事が一般的なようです。

条件①~⑨以外の事でも、何かしらダメと判断される条件がある場合には、初期費用を用意してくれないという結果になってしまいます。

(例)本人は風呂無しアパートでも構わないと思っていたが、役所で許可が下りなかった。など

まとめ

①賃料が53,700円以内

②管理費負担額が5,300円以内

③初期費用が279,200円以内

④引越しの許可が下りている

⑤生活保護を受けている管轄内

⑥適切な階数

⑦お部屋の広さが一定以上

⑧トラブルが多い物件ではない

⑨定期借家契約ではない

⑩その他、役所の会議で却下されない

以上が東京都における、単身の生活保護受給者がお部屋探しに必要な条件になります。

最後にお伝えしたい事

これまでの経験から、特に②④⑤の条件で契約破断になる可能性が高いです。

契約キャンセルに伴う違約金発生を防ぐためにも
お引越しの許可に関しては十分確認を取るようにお気を付け下さい。

この記事を書いた人

生活保護専門の不動産屋として、2013年鶯谷にて「鶯谷不動産」を開業。2016年、北千住移転の際「株式会社うぐいす不動産」に法人化。2020年、栃木県小山市へ移転。2022年、東京都居住支援法人に指定。これまでに成約された生活保護のお客様はおよそ500人以上。【生活保護受給者】のお部屋探しは色々な条件が絡み合います。福祉事務所からの許可をはじめ、オーナー・管理会社・保証会社等、全ての条件をクリアしなければいけません。このブログでは10年間の経験で得た、リアルな現状をお伝えいたします。

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